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天野なつからの解放

by Love in Qushu

2007年だと思う。雑誌「Number」でイチロー選手の特集があったとき、こんな記事があった。2006年のWBC日本代表の監督だった王監督とイチロー選手が、寿司屋で交わしたという会話だ。イチロー選手が王監督に「現役時代、チームのためにプレーしてました?それとも自分のためでした?」と聞いた。イチロー選手自身、タブーというか禁断の質問だったと振り返っていた。

これを読んでいた頃の私は組織人間だった。自分の頑張りが組織に反映されることがやりがいだった。人は組織のために生きるのだと思っていた。今から10年前か。若いな(笑)。組織のために生きるのは素晴らしいことだ。でも。

LinQのリーダー・天野なつ。そう、なっちゃんはたいていは(ニュースとかで)こう称されると思う。「LinQのリーダー」という冠がつく。ニュースとかで冠がつけられるのってなっちゃんと副リーダーの原さん、センターのゆうみん、あと最近は宣伝部長の伊藤ちゃんくらいじゃないかなあ(伊藤ちゃんはLinQというより「顔のデカイアイドル」とか「プロレスラー」とか、LinQの看板を飛び越えているからすごい)。

取材する側はたいていリーダーに話を振るし、最後のまとめもたいていリーダーに振る。組織の長なのだから。会社の会見でも社長とかに質問が集中したり、社長の発言だけが抜粋される、なんてザラだ。東芝の会計問題だって、会計責任者ではなく社長の言葉ばかり報じられている。だからなっちゃんはLinQという看板を背負い続けていたと思う。組織のトップの発言が、まんま、組織の発言となる。メンバーが30人近くいればみんな考えはバラバラだけれど、リーダーの発言がLinQとしての発言となってしまう。つまり、意思統一がされていると勝手に解釈されてしまう。

まあ「四の五の言わないの!私の発言が絶対なんだから」というリーダーもいるだろう。でも、なっちゃんはやさしいので、みんなの考えを聞いた上で、そのバランスを取った発言をしようとしていたと思う。30人近くいる、しかも年齢も幅広い組織の声を一つにまとめるなんて、他のグループにもなかなかないし大変だっただろうけれど(リーダー論みたいな本を買ったなんて話もしていたっけ)、なっちゃんは器用だしやさしいのでそれがある程度はできていたんだと思う。

だから正直言うと、今までなっちゃんと話していても、リーダー・天野なつとしての発言で、天野なつ一個人としての発言はあまり聞いていなかった気がする。いや、聞けていなかった。例えば一個人としての目標とか夢を聞いても、出てこなかった。LinQが大きくなることが私の夢。そんな感じだった(もっとも物販のなっちゃんは全然読めないし、たぶんこの人の考えていることを理解することは到底不可能だと思う)。

組織が大きくなることが自分の夢。それも立派な生き方だ。それだけ愛情が注げるなんて、素晴らしいことだと思う。でも、自分がそれだけ注いだものが突然なくなったら?

今回の再開発は、なっちゃんにとっては受け入れがたいものだったかもしれない。自分が心血注いでやってきたものが「このままではダメなので再開発します」と言われたら、それは自己否定とも言えるわけで。あなただって、自分がプロジェクトリーダーとして一生懸命取り組んできたものが、「このままじゃダメ」とメスを入れられたらそりゃショックだし、頑張った分、憤りもわくはずだ。

ただ。なっちゃんが自分を犠牲にしてまで注ぎ込むという状況を作ってしまったのも事実だったと思う。リーダーとはいえみんなで支えよう、という気持ちが自然と薄れてしまったのではないか、任せっきりになってしまったのではないか、という気持ちがメンバーに芽生えた気はする。いつの間にか組織の上に立つ人に甘える、なんてのは私自身も経験がたくさんある。しかもリーダーがそつなくこなしちゃう人だったらなおさらだ。

今回の再開発は、結果的になっちゃんを、リーダーという肩書きから少しでも楽にするという側面もあるのではと思う。再開発動画で見たけれど、メンバーにそれぞれ担当を割り振った(例えばダンス担当にあやのんがついたように)のも、なっちゃんの負担軽減という側面もあると思う。なっちゃんの負担を減らし、なっちゃんを少しでも楽に、そしてなっちゃん自身のために力を注げるように。そんな配慮があるのではと、端から、もとい、北から見ていて感じる。

あの再開発動画でダンサーさんによる採点があったけれど、なっちゃんの点数は低かった、あの採点が全てではないけれど(個人的にはMIKIKO先生にやって欲しかったけれど 笑)、でも、一つの評価だ。LinQのリーダー・天野なつとして頑張ってきたけれど、その肩書きが取れたときの、一人のアイドルであり、一兵卒・天野なつとしての点数が低い、というのは、たぶんだけれど発奮材料にはなったはずだ(あの評価が全てではないけれど。でも、わかる気もする)。

再開発で結果的になっちゃんは天野なつを伸ばす機会を与えられていると思う。少し、いや、だいぶ自由になったと思う。再開発動画についてはおそらく一切ツイートしていないはずだけれど、それは、リーダーとして発言になるから、というのもあるだろうけれど、自分が語る必要もなく、いろんなメンバーが自分の代わりとなっているから、自分が言うまでもない、という部分もあると思う。

今のなっちゃんは「天野なつ」に集中できていると思う(最近のLinQを見ていないので完全に推測なのだが)。だから、福岡市民会館と中野サンプラザで、リーダー天野なつではなく天野なつを見られるのが個人的にはとても楽しみだ。

冒頭のイチロー選手の質問に王監督はこう答えている。組織人間だった、そして当時組織に自分を注ぎ込むあまり疲弊していた私は、この言葉を読んで衝撃を受けた。

あなたは、組織のために生きてますか?
それとも、自分のために生きてますか?


Love in Qushu
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